ENTERTAINMENT / 2020.05.23
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消えたステージ

こんにちは。
新感覚バレエファンタジー「Colorpointe」の支配人、Hinkです。
Colorpointeは、ある時はダンスボーカルアーティスト、ある時はミュージカルカンパニー、ある時はダンサー/講師と様々な顔を見せる、変幻自在のエンターテイメント集団です。
さて、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
こんなご時世に、いったい何を書けばいいんだろう。
そんなことを考えだして、ぐるぐるしてしまって、コラムにだいぶ間が空いてしまいました。
そう、もう名前を出すのも抵抗がある、未曾有の疫病「アレ」。
私たちの生活を全て変えてしまった「アレ」。
話題として避けては通れない「アレ」。
について、この場を借りて少しだけ想いを話そうかななんて。
ためになる記事にはならないと思います。
ただ1人の、舞台人としての、今の気持ちを。
突然の悪夢

アレは突然やってきた。
それまでも私たちは、いや、どんな舞台人だって、ステージを無事に迎えられることが当たり前だなんて思ってやってなかった。
大地震や台風は来ないか?誰かが怪我をしたりしないか?なにか考えもしないトラブルがあるんじゃないか?
生の舞台っていうのは、いつだってそんな恐怖と戦いながら作られていくものだと思ってます。
だけどアレは、そういった不安とはまた違う形で私たちのもとにやってきた。
そう、ゆっくりゆっくり、真綿で首を絞めるかのように。

じわじわと、確実に、その存在を主張してきたアレ。
私たち主催は青ざめながら、周りのアーティストの様子を見ながら、今起きている事態をうまく呑み込むことも出来ずに、突然の「決断」を強いられることになる。
誰かにとって人生最後だったステージが。
誰かにとってやっと決まったステージが。
誰かにとってただ一度きりだったステージが。
いとも簡単に消えていく。
こんな悪夢あるだろうか?
そう、あるのだ。
実際に目の前で巻き起こっているのだ。
予測不能への突入である。

こんな世界になっても、不思議と私の精神は落ち着いていた。
おそらく、何か慌てて策を練ったりジタバタしても、無意味と感じたからなのかもしれない。
今まであらゆるトラブルに遭遇してきたし、その度になるべくスピード重視で(トラブルとは大体そういうものだけど)決断、実行、解決または回避してきたと思う。
でも、これは手が出しようがない、静観するしかない。
私たちは音楽やエンターテイメントとともに生活を営んで、時には救われながら生きてきた。
「エンタメは生活必需品じゃない」なんて、あまりにも古すぎるし、即行死に直結しないからといって、心が枯渇すれば人は生きてはいけない。
だから、ステージはなくならない。
私はそう確信している。
待つしかないんだ。舞台にこだわる自分がいる限り。
そう感じていた。

この自粛期間に、新しいことを始める人はたくさんいると思います。
私たちも、改めてSNSのありがたさを痛感した。SNSがなければ、この状況でアーティストや演者は本当になす術がない。
SNSのおかげで、ファンと繋がっていられる。
上手くやればこの期間にファンを増やすことだって出来るかもしれない。
でも、それは決してメインにはなり得ない。
あくまで「生の舞台」があったうえでの、サブでしかない。
(もちろんそれがメインになれる人だって沢山いると思います。YouTuberさんや動画配信者さんだって素敵なお仕事ですから。今は私たち「生舞台に取り憑かれた族」の話なので、それは置いておきます)
「新しい生活様式」
なんて言葉が出ているけど、バーチャルが生の舞台の代わりになることなんてあり得ないんです。
リモートじゃ、ダメなんだよ。
映像じゃ、ダメなんだよ。
そんな穴だらけの満席じゃ、舞台じゃないよ。
そんな私達みたいな人種がいるんだよ、沢山。
カミテ?やっぱシモテにはけて。
あ、2.5番じゃなくて3番にしよう。
そこシンメ確認して。
ツーエイト聞いてから動き出しね。
そして、重い扉と、いくつもの照明。
スモークの匂い。
振動で伝わる世界。



ステージはなくならない。
劇場も、ライブハウスも、代わりになるものなんかない。
だからね、ステージがなくて不安だけど、踏ん張ろうねって、思う。
どうせ辞められないんだもん。待つしかないじゃん。
絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に、なにものも、本当の意味で私達からステージを奪うことなんて出来ない。
そして、お客様たちがあの生の舞台の感動を忘れてしまうこともない。
私はそう、信じています。
この機会に、ちょっと憧れてたパン屋さんのバイトとかするよ。
あ、ピザつくる仕事もいいなぁ。
そうしてでも、待つよ。
何度でも何度でも、戻ってきてみせるよ。
取り憑かれてんだもん、私達。

願わくば、あの憧れの劇団も、あの素敵な劇場も、お世話になったライブハウスも、みんなみんな、生き延びますように。
今はただ、それを祈るだけです。