SCRAMBLE

ENTERTAINMENT  /  2020.09.05

33612

スーパースターの訃報

そのショッキングなニュースはなんの前触れもなく、日本中、いや世界まで轟いた。

受け入れ難かった。
誰もがそうだったと思う。
「死」という言葉に全く結びつかないスーパースターの訃報。

だけどあれから1ヶ月が過ぎた今、その事実は「事実」として、人々の生活の土に根付いている。
そう、これが生きるということ。
命がめぐるということ。

申し遅れました。
わたくし新感覚バレエファンタジー「Colorpointe」の支配人、Hinkです。

Colorpointeは、ある時はダンスボーカルアーティスト、ある時はミュージカルカンパニー、ある時はダンサー/講師と様々な顔を見せる、変幻自在のエンターテイメント集団です。
カラーポワントと読みます。

本日は、エンターテイメントの世界、その価値について。

彼の「キンキーブーツ 」でのローラ役は、本当に素晴らしかった。
NYで見た本場のそれと、全く引けを取らない迫力、生命力、輝き、役柄への没頭。
ステージでの立ち振る舞い、会場を丸ごと呑んでしまう圧倒的なオーラ、群を抜いていた。

私はカーテンコールで涙しながら、今自分の手の中に「Colorpointe」があること、その年の秋に自分自身のミュージカル制作が待っていることに心底感謝した。
もし作り手として、演者として、Colorpointeがない状態(そんな状態は仮定でしかないけれども)でこのミュージカルを見たら、悔しくて悲しくて、あまりにも虚無で、立っていられなかったと思うからだ。

それほど、私にとってステージは「ただ観るだけのもの」からは程遠かった。
作るもの、であり、立つもの、なのだ。

その時期はメンバーの卒業なども控えていて、いくらか不安だったり心細かったりしていた頃だと思う。
それでも、今まで何度も「続ける」という選択をしてきて良かった。と、心から思った。

私はこんなにも、エンターテイメントを愛している。
劇場、ステージ、という場所で、音楽と照明と踊りにまみれて死んでいけたらそれがいい。

スーパースターの訃報を聞いた時、私は真っ先に「あぁ、あんなにエネルギーのある人を失ってしまうなんて、周りの人々はどんなに辛いんだろう」ということを思いました。

その中で思い浮かんだうちの一人が、まさにその日に、生放送で涙を流しながら歌を歌っていた。

その時、私は確信したのです。
あぁ、やっぱり、歌や踊りは「救い」であり「祈り」であり、神に、というか、天に、捧げるものなんだと。

「こんな辛い時に、無理に歌わなくていいよ」
「可哀想」
「見てて痛々しかった」

そんな意見もあったと思う。
真意なんて本人にしかわからないし、どちらでもいい。

でも私には、「浄化」に見えた。
旋律に魂をのせて、彼に届けているように見えた。

ブロードウェイ。キンキーブーツの看板。

ものごとは、風化していく。
あんなにショッキングなニュースも、1ヶ月経てば人々はその胸に受け入れて、また今日を送り、新しい話題に目を移す。

それでいいと思う。
そうでなければ、人は気が狂ってしまう。

だけど、だからこそ、見失いたくない。
命はいつもめぐっていて、自分だって、大切な人だって、いついなくなるかは本当に分からないってこと。

音楽や舞を奏でる意味。
重さ。
エンターテイメントは時に、誰かを救う。

立ち止まって、宝物を探すみたいに、丁寧に生きよう。

どうせいつかみんないなくなって、一人残らず死ぬのだから、今日を美しく。
今日を、美しく。

それでは、また。
「バレエの常識は、増える。」

    Hink

    新感覚バレエファンタジー「Colorpointe(カラーポワント)」主宰。
    立ち上げから、演出、振付、作詞、運営など総合プロデュースし、自身もダンスボーカルとしてステージに立つ。
    海外のカルチャーイベントに多数出演し、国内外問わず活動中。

    日本工学院ダンスパフォーマンス科や、TRFのSAMが主宰するダンススクールにてバレエ講師を務める。
    また、他アーティストへの振付提供やダンス指導なども行うなど多方面に渡り活躍の場を広げている。

    2019年10月、プロデュース・脚本・振付・作詞・衣装まで全てを手がけたバレエミュージカル「シュガーポットサーカス」を上演。