SPORTS / 2020.07.30
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クロフネ種牡馬引退へ~名馬を紡ぐ物語〜

こんにちは!
馬事文化応援アイドル 桜花のキセキ・一瀬恵菜です。
新馬戦も続々とスタートし、楽しい夏競馬の日々が続いていますね。
本日は、私が競馬の魅力を教えて頂いた一頭の競走馬、クロフネの功績を改めて振り返ろうと思います。
なぜこのタイミングで振り返るのかというと、先日クロフネが種牡馬引退の運びとなったからです。
競走人生を左右した当時の外国産馬ルール
クロフネは1998年3月31日生まれ。
父フレンチデピュティ 母ブルーアヴェニュー
アメリカで生産された本馬は、あのディープインパクトや、キングカメハメハのオーナーである金子真人さんの所有馬となりました。
いわゆる「マル外」と呼ばれる外国産馬。
現在では大きく気にせず出走できるレースも、過去の中央競馬界では外国産馬の出走頭数に厳しく制限があったり、(現在9頭まで可でも、当時は2頭までなど…)日本ダービーでも外国産馬の出走は叶わなかったりした時代がありました。
2001年より日本ダービーに外国産馬が最大2頭まで出走可能となり、まさにクロフネがクラシック世代となる年でした。
私はここでもやはり…金子さんはダービーをたくさん勝利されているオーナーさんだと実感します(笑)
世代最強を目指し繰り広げた、数々の名勝負

松田国英厩舎所属となったクロフネは、新馬戦は10月の京都芝1600m。単勝オッズは6.9倍で初戦は2着と敗退しましたが、中2週で挑んだ京都芝2000mは1.3倍の人気に応え見事勝利。
続いてエリカ賞も勝利しますが、4走目に初めて挑んだ重賞、ラジオたんぱ賞3歳ステークスでは、この世代のレベルを感じる一戦となります。
4戦4勝でターフを去り、幻の三冠馬と呼ばれたアグネスタキオン、そしてこの世代の日本ダービーを制したジャングルポケットに先着を許し3着。
後から振り返れば、この三頭の対戦はこれがラストであり、いかに豪華メンバーだったかが分かります。
しかしクロフネも次走毎日杯では、5馬身差の着差をつけ重賞初制覇。時計面でも力があるところをみせていました。
そして日本ダービーへの出走権を巡り、NHKマイルカップに挑むことに。初めて関東圏へのチャレンジとなりました。
スタート後は少し後ろからの位置どりになり、4コーナーではどう勝ちきるのか…とさえ思えるポジション。しかし直線前を行くグラスエイコウオーを、ストライドの広いフットワークで差し切り見事1着。
マイルでこの競馬ならば、2400mとなる日本ダービーでも、楽しみが広がるような勝ち方であると思えるようなレースでした。
そして迎えた日本ダービー。自ら掴み取った権利での大舞台は、共にピンクの帽子で挑んだジャングルポケットの素晴らしい伸びに敗れ5着となります。
秋の始動戦は神戸新聞杯でしたが、隣のお馬さんに少し接触しているようにも見えるスタートとなり、外からいい脚で来ていましたが3着。
訪れる転機
その後は天皇賞秋へ向かうこととなりましたが、外国産古馬が持つ獲得賞金額を上回ることは出来ず、限られた外国産馬出走枠に、入ることができませんでした。
そして、初めてダートに挑戦することとなります。
私が父に競馬場に連れて行ってもらったりする中で、「お馬さんが可愛い!見たい!」という気持ち以外で「あ…競馬ってかっこいいな。これが強いお馬さんということなのかな…」とわからないなりに感じたのが、クロフネの次走となった武蔵野Sでした。
3、4コーナーのあたりで「持ってるものが違う」とわかるような手応えで、その勢いは止まることなく直線を迎えます。
武豊騎手が追い出し、しばらく追ったのち、あの長い東京の直線でリードは広まるばかり!後ろを確認する余裕もあるその走りは、幼い私に大きな衝撃を与えた9馬身差でした。
白くて可愛いお馬さんというイメージがいい意味で一変し、競馬の魅力を知った瞬間のレースであったと言ってもいいです。
クロフネはその後、ジャパンカップダートでも物凄い手応えで圧巻の7馬身差V。その先が楽しみでならない一頭でしたが、屈腱炎を発症し引退となりました。
引退後に出会えた思い出

引退後、社台スタリオンステーションさんへ見学させていただき、クロフネを見た際に、私の人生の中でキーホースであることを感じました。
歳を重ねて、どんどん白く美しくなっていく毛色になんだか切なさも感じましたが、彼が今そこで生きていることが何よりも愛おしくて、嬉しかったです。
過去に設立されていた売店では、クロフネのたてがみをもらえるプレゼント企画があり、今でも大切にしている宝物です。
子孫の活躍を胸に、穏やかな余生を

産駒の活躍はもちろん、近年ではアエロリットが思い浮かびますが、同じ芦毛であることはクロフネを想像できて、ラストランまでしっかり駆け抜けた彼女には熱い想いが溢れました。
長く種牡馬生活を続けていたクロフネの血を引く産駒達は、現在の日本競馬界でもたくさん存在しています。
その一頭一頭の活躍を願いつつ、クロフネがゆっくり穏やかに過ごせるように、いつまでも元気でいてほしいなぁと心から思っています。
皆様にとってきっかけとなったお馬さんはいるかと思います。いつまでも大切な思いを持っていたいものですね。
本日も読んでいただきありがとうございました。