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SPORTS  /  2020.09.15

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『生きることを教えてくれた』馬と人生を歩むオーナー

馬が好きという気持ちから競馬も愛され、10年ほど一口馬主としても競馬に関わりをお持ちの井口久美子さん。
現在競走馬を引退したガトーブリランテのオーナーさんであり、これまでも乗馬を嗜まれ、厩務員の勉強もされていたりと、大変馬を愛されているお方です。

本日は家族の元出資馬であるガトーブリランテと井口さんが繋いで下さった、素敵なご縁によりインタビューをさせていただき、そちらをまとめさせて頂きました。

井口さんとガトーブリランテの出会い

当時、募集馬見学ツアーに参加されていた井口さん。そこでガトーブリランテと出会いました。
脚が長くて腹袋もしっかりとありグラマーな彼女を見て、スタッフさんの意見も参考に出資を決意されたそうです。

血統ももちろん大切な要素ですが、インスピレーションや目の輝き、性格などが出資するにあたって重視されている点なんだそう。
あの日私の家族もブリちゃんの可愛さにキュンと来ていたように、彼女にはそんな魅力があったのかもしれません。
同じ日にツアーでブリちゃんに触れていた可能性も高く、私自身も改めてご縁を感じています。

デビューまでも喉なりや手術など様々なことが起き、3歳の3月にデビューが決まりました。
しかし未勝利戦の期限を考えると焦りもあり、その中でレースをコンスタントに使うことには、脚元もメンタルも心配になる日々だったと言います。

東京競馬場で初勝利した日は、期待も不安も入り混じるような中で、勝利を掴んだレース。
ブリちゃんの競走馬時代の中で、一番印象的な日だそうです。

競走馬を引退してから

井口さんは基本的には牝馬に限定して一口出資をされています。大きな理由として、出資した馬が故郷でお母さんとなって、血を繋ぎ残していってほしいという思いと夢があるからだそうです。

厳格なルールはありませんが、やはり一口馬主クラブのお馬さんでも全頭繁殖入りできるわけではなく、乗馬への道も乗馬としてのチャンスが与えられる段階。

ガトーブリランテは急遽、膝の故障で引退。
繁殖入りを願っていましたが、乗馬としてある牧場さんへ行くこととなったそうです。

しかし、乗馬へのチャンスを待ってはいても、膝の故障を持つブリちゃんと、現段階で脚元に不安が少ないお馬さんとでは、ブリちゃんの乗馬へのチャンスは減ってしまう現実がありました。

以前、乗馬クラブで厩務員の勉強もされていた井口さん。故障してしまったクラブのお馬さんがいた際に、回復のために力を尽くしても、治療費、休養を考えると費用も安くない現実があり、次にクラブに行った時にはもうそのお馬さんが居なかったこともあったそうです。

もしも一口馬主クラブ規定(牝馬は6歳3月に引退する規約)の期間いっぱいまでブリちゃんが現役だったら、もう一勝できていたかもしれないし、繁殖入りにも近づいていたかもしれない。
そう思うと、切ない気持ちもあり、クラブへ電話して彼女がいる場所を教えて頂き、引き取りに至ったそうです。

ときがわホースケアガーデンとの出会い

5年前に、引退した乗馬クラブのお馬さんが会員さんに引き取られ、ときがわホースケアガーデンへやって来るのをきっかけにこの場所を訪れた井口さん。

さらにその時期に井口さん自身、体調を崩され手術を控えていたそうで、遺書には「ときがわホースケアガーデンへ寄付する」と書かれた経緯もあるそうです。
今よりもときがわホースケアガーデンの施設が整っていなかった頃で、少しでも馬のために、と願った思いからでした。

無事に手術が終わり、今年に入ってから再び訪れた際に、友人がボランティアでお手伝いしていたことから、井口さん自身も再び厩務を学び始めました。
そこで代表・鈴木さんの信頼性ある馬との接し方を実際に見て、ガトーブリランテをこちらに預けることに決めたそうです。

友人が結びつけてくださったご縁、そして馬のお世話もお手伝いしていた関係で、馬房の空き状況もすぐにわかったんだそうです。

ガトーブリランテが初めてときがわホースケアガーデンへ

ガトーブリランテが本当にここへ来てくれるのか、到着日まで不安もある日々。
馬運車のドアが開き、お尻が見え、お顔が見える態勢になった際に「ああ、ブリちゃんだ…。本当会えて、生きてて良かった」と心から感じたそうです。

降りてきて、吸い込まれそうな程凄く綺麗な目で周りを見渡していたブリちゃん。

私もその時の動画を見せていただいたのですが、アスファルトを歩く姿は、凛々しくも感じました。
井口さん自身も、彼女の新しい一歩を手助けすることができて良かったと実感したそうです。

再会したら、一番最初にブリちゃんに感謝を伝えようと思っていた井口さんですが、常歩が思ったよりも速く、どんどん歩いていくので、お手入れをしている時に「ありがとう」と伝えたそうです。

井口さんのお馬さんとの出会い

アメリカへ旅行された際、外乗がきっかけで”人馬一体”とはどう言うことなのかと興味を持たれました。馬を好きな気持ちから、競馬へも思いは広がりました。
最初に好きになった競走馬はスペシャルウィークだそうで、最初に出資されたのもスペシャルウィーク産駒の牝馬でした。

スペシャルウィークの引退をきっかけに、北海道へ会いに行ったりする中で、”引退馬”に興味を持たれるようになったそうです。

引退競走馬を持つことになったターニングポイントとして、スペシャルウィークのように競走馬時代に活躍し、引退後もお仕事があるお馬さんはもちろん素晴らしいけれど、競馬の世界ではそれだけではないという思いが生まれてきました。

引退馬を支援する活動が広がって来る中で、維持費はかかりますが、放牧を主体とする預かり方など色んな方法があることを知り、自分でもできるのかな…と思った時、たまたまブリちゃんの現状が重なったんだそうです。

ブリちゃんにとって何が幸せなのか

井口さんはガトーブリランテの競走馬時代について、ステージに立っているアイドルをファンとして近くで応援していたような気持ちと表現してくださいました。

今のブリちゃんは、馬運車というステージから降りてきて、同じ目線になって付き合っていく存在として、叱るとき、褒めるときが自然と生まれて来る関係性になったと。

井口さんから見たブリちゃんは、とても”マイペース”だそうです。気分が乗らないと呼んでも来なかったりすることもあるそう(笑)
後ろからちょっかいを出してきたりとまだまだ若さも溢れていますが、運動に関しては真面目な一面も!

これからどんどん絆を深めていきたいと考えられている中で、一番忘れてはいけないのは「ブリちゃんにとって何が幸せなのか」ということだと教えてくださいました。

まだ5歳の彼女の未来について、乗馬ももちろんありますが、それ以外にもお馬さんの可能性は広がっていて、社会や人の為に役に立って感謝された結果、彼女も幸せだと感じられるのが一番いいのかなぁと考えられているそうです。

認定NPO法人引退馬協会の「再就職支援プログラム」へのエントリーも視野に入れていらっしゃるそうですが、やはり彼女への情も湧いて来ているというのが正直なお気持ち。
ですが何よりも、全てを踏まえて「ブリちゃんにとって何が幸せなのか」を考えられています。

競走馬を引退したブリちゃんは、ここで頑張っていて、忘れないでいてあげてほしい。多くの方に会いに来てほしいとお言葉を頂きました。

井口さんにとって馬とは

”「生きる」ということを教えてくれる存在"

様々なバックグラウンドを抱えながら、ここで暮らしている子たちを見る中で、生きてるだけでいいんだと教えてくれる存在。

競馬にも一頭一頭ストーリーがあって、単純なギャンブルではないと思っています。
そしてそのストーリーは引退後ももちろん続いていくので、競馬ファンの方も心の中でそういう思いを少しでも持って頂けたらなと。

是非ブリちゃんにも会いに来て頂いて、競走馬の引退後のストーリーを考えたり、どうしたらいいかなと一緒に案を出したりして頂けたら嬉しいです。

まだまだ模索することが沢山あるので、一緒に考えましょう。

とメッセージをくださいました。

是非ときがわホースケアガーデンさんへ足を運ばれた際には、改めてお馬さんのことを考えて頂く機会になったらと思います。
私自身も大変心から穏やかな気持ちになれる場所です。

この度はたっぷりとインタビューをさせていただき、井口さんには心から感謝が溢れております。

ブリちゃんが繋いでくださったご縁だと思いますので、この輪もどんどん広がっていきますように。

ご協力頂き本当にありがとうございました。

    一瀬恵菜

    馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」メンバーとして、2018年5月より活動開始。
    競馬場やウインズにて、ライブイベントやトークショー、予想番組等に多数出演。
    競馬好きの家庭に生まれたこともあり、幼少期から競馬に慣れ親しむ、桜花のキセキ一の競馬通。
    2019年5月に立ち上げられた、馬事メディア「HORSE CULTURE LOVERS」では、
    取材等も自ら行って記事を寄稿するなど、馬事文化を広めるための広報活動も積極的に行っている。